田淵行男写真集「山の意匠」の作品解説を読んでいると、「わが国の高山に産する草花の中にウスユキソウと名のつくものに三つのタイプがある。このタカネウスユキソウとミネウスユキソウ、それにヒメウスユキソウで、最後のものが本場のエーデルワイスに最も近い種類になっているが北アにはこれだけは見られない(中略)。ミネウスユキソウは茎の最上部の葉があたかも花弁のように白い綿毛をこうむり、頭上花を囲んで美しい。花弁状の葉の形には地域による著しい変化が見られる」という記述にぶつかった。そういえば谷川岳の西黒尾根を登った折に、ホソバヒメウスユキソウを撮ったなと思い出す。これは谷川岳と至仏山だけに見られる種類だという。さらに過去の撮影データをチェックしていると、北岳山頂付近で撮ったものの中にミネウスユキソウがあるのを発見した。当時(2013年)何気なく撮ってそのままにしておいたらしい。山行の思い出に浸ったまま、時間が流れてゆく。
銀杏の記憶
近在の公園に植えられている銀杏がきれいだったので撮ってみた。神宮外苑の銀杏並木に見物人が押し寄せて大変なことになっているらしい。東京で銀杏がきれいなところといえば、御茶ノ水のニコライ堂前や本郷の東大キャンパスなどを思い出す。並木ではないが、奥多摩御岳渓谷の玉堂美術館前にある大銀杏も見事だ。では今まで生きてきた中で最も記憶に残っている銀杏とは?
それは北大キャンパスにある銀杏並木かも知れない。その規模といい、校舎とのマッチングといい、美しさといい圧巻と思える。
ミッドタウン
久しぶりに六本木の街へ。サントリー美術館で開催中の展覧会が目的。東京ミッドタウンになってから初めて来たことになる。その昔、六本木に事務所があって通っていた。旧防衛庁があって、六本木食堂があった時代だ。交差点の角に誠志堂書店があって、その並びに香妃園があった。上司に鶏煮込みそばをご馳走になったことなどを思い出す。書店はすでになく、香妃園は他所に移転してしまった。諸行無常というしかない。
木瓜の実
春先に赤い小さな花弁をつける木瓜の樹に実がなった。迂闊なことに、この果実が木瓜であるとは調べてみるまで知らなかった。バラ科で属名は「Chaenomeles(カエノメレス)」といい、和名の「木瓜(ボケ)」は、果実が瓜に似ていることに由来するらしい。実を収穫して、果実酒に漬け込む人が多いようだ。
都会の化石
都心に出たついでに日本橋の三越まで足を伸ばした。大理石の階段に化石があることは以前から知っていた。いつか見てみたいと思っていたのだ。件の化石は本館中央ホールの1階から2階に上る階段の壁にあった。アンモナイトともう一点、ベレムナイト。べレムナイトとは白亜紀に絶滅した軟体動物門の一分類で、コウイカに近い種であるらしい。化石なら博物館に行けば見学できるわけだが、身近な空間にあるというのがいい。眺めていると、太古の時間に思いが飛んでいった。